路線バスの燃料

1.ディーゼルバス

平和交通(千葉県)
ごく一般的な、ディーゼルエンジンを積んだバスです。軽油で動きます。
ディーゼルエンジンは耐久性に優れ、100万km程度の走行が可能だと言われています。

2.天然ガスバス

ノンステップバス/山梨交通(山梨県)
ツーステップバス/鯱バス(愛知県)
天然ガスを燃料とするバスです。CNGバス・NGVバスとも呼ばれています。天然ガスを貯蔵するためのボンベを積む必要があり、一般的にツーステップバスでは床下に、ワンステ・ノンステップバスでは屋根上に積んでいます。そのため、ワンステ・ノンステップバスのCNGバスでは、屋根上に大きなでっぱりがあることが外観上の特徴になっています。またツーステップバスでは、床下のタンクの位置に横長のスリット状の通風孔が付いており、ここで見分けることができます。
CNGバスは国内大手4メーカーから販売されていましたが、日野のみ非常にシェアが小さくなっています。これは、日野が早い段階からハイブリッドバスに重点を置いていたため、天然ガスバスの開発に積極的ではなかったためと考えられます。また、ディーゼル車を後天的に天然ガス車に改造する事例も多く見られます。
期待される効果としては、

・光化学スモッグ・酸性雨などの環境汚染の原因となる窒素酸化物(NOx)、炭化水素(HC)の排出量が少なく、硫黄酸化物(SOx)は全く排出されない。
・喘息などの呼吸器疾患の原因となる黒煙や粒子状物質(PM)は、ほとんど排出されない。
・地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)の排出量を、ガソリン車より約2割低減できる。
(日本ガス協会HPより引用)

等があり、都市環境の改善に大きな効果をもたらします。しかし欠点もあり、ガスの充填ステーションが少ないことや、ガスタンクの充填可能期限が定められていることなどがあります。特に後者は、「製造後15年を過ぎたタンクには燃料の充填ができない」というもので、18~25年程度の使用が一般的なバス車両としては無視できない欠点です。タンクを交換すれば継続使用ができるものの、東邦ガスの試算では、大型バスのタンク交換で概ね200万円程度と高額の費用が掛かります。そのため、CNGバスは14から15年目で廃車になる事例が多く見られます。
現在では、軽油で動くハイブリッドバスに低公害車の主流を奪われており、新規でCNGバスを導入する事例はほとんど見られません。しかし、日本ガス協会ではCNGタンクの充填可能期限の20年への延長を働きかけているほか、イタリアのイベコ社が2018年から日本国内でのCNGバスの販売を目指しているなど、捲土重来の可能性がないわけではありません。また将来的にメタンハイドレートが実用化されれば、メタンガスを燃料とするCNGバスが主力となる時代が来るかもしれません。
(最も、メタンハイドレートを分解して水素を産み出す技術も研究されており、今度は燃料電池バスに地位を奪われる可能性もあります。)


3.ハイブリッドバス

宇部市交通局(山口県)
最近流行りのハイブリッドシステムを搭載したバスです。ハイブリッドシステムには様々な種類がありますが、自動車に用いられるのもとしては、大きく分けて電気式ハイブリッド(蓄電池を用いて電気としてエネルギーを保存)と、蓄圧式ハイブリッド(油圧ポンプを用いて圧力としてエネルギーを保存)の2つの方式があります。現在製造されているハイブリッドバスでは電気式ハイブリッドが採用されています。
電気式ハイブリッドシステムは、エンジンと回生ブレーキ、蓄電池等を組み合わせたシステムです。アクセルを離した時に、回転し続ける車輪の回転力をモーターに伝えて発電・蓄電し、逆に加速時には補助的に電気モーターを回すことで燃費の向上を実現したものです。電気は補助的なもので、主に軽油で走行します。
国内4メーカーが製造していますが、日野が圧倒的なシェアを誇っています。蓄電池を車両に搭載する必要がありますが、日野・ふそうのノンステップバスでは屋根上に搭載しているため、天然ガスバス同様に屋根上にこぶが載ったような形になっています。


4.燃料電池バス

トヨタFCバス(デモカー)
車両に燃料を投入し、車両内で発電することで走行する車両です。現在は水素を燃料とし、酸素との化学反応で電気を起こす車両が主流になっています。2017年時点ではトヨタのみが製造販売していますが、近い将来日野も販売を開始する見込みです。
下記の電気バスに比べて走行可能距離が長いため、今後の普及が期待されていますが、価格が1億円と高価であること、水素充填施設の普及が必要であるなど、課題はあります。また排気ガスや騒音の観点から都市環境の改善には寄与しますが、現在の技術では水素の製造に多量のエネルギーを消費することから、トータル環境負荷はハイブリッドバスと変わらないとする見解もあります。
将来的には、天然ガスバスの項でも書きましたが、メタンハイドレートを分解して水素を安定供給できるようになれば、本格的に環境に優しい自動車としての普及が見込める可能性があります。


5.電気バス

改造車の例/岩手県北自動車(岩手県)
車両に蓄電池を搭載し、外部から充電して走行するものです。蓄電容量の問題から燃料電池バスより走行距離が短くなるデメリットがありますが、専用の充電設備が必要なものの、水素ステーションほど大掛かりでないため、導入しやすいメリットがあります。
現在国内では電気バスの量産車はなく、現在走っているものは後天的に電気バスに改造されたものか、限定販売モデルになります。また韓国現代自動車や、中国BYD社など外国製の電気バスの導入事例もみられるようになってきました。日本では低公害車としてハイブリッドシステムを主軸に研究開発が進んでいたため、電気バスの分野では欧州や中韓に対して後塵を拝す形になっています。

6.BDF燃料バス

両備バス(岡山県)
BDFはBio Diesel Fuelの頭文字をとったもので、生物由来の油から作るディーゼルエンジン用燃料の総称です。化石燃料と違って、植物は育成段階で大気中のCO2を取り込んでいるため、燃やして発生するCO2はもともと大気に存在していたもの、つまりトータルで大気中のCO2量を増加させていないため、環境にやさしいと言われています。しかしながら、南米では食用穀物畑がBDF用穀物へ転換され食品価格が上がる、また東南アジアでは森林を切り開いてBDF用の穀物畑が作られる事例がある等、問題点も多くあります(バイオマスエネルギーと同じ構図ですね)。
日本では天ぷら油などの料理用排油を再利用したBDFバスが広まっています。軽油と混合すると軽油取引税の課税対象となるため、専用車両を設けてBDF100%で使用する事例が大半を占めます。

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